「この契約書、どこか問題ある?」——弁護士に相談したいけれど費用が気になる。顧問弁護士がいない中小企業では、こういった悩みが生じがちです。
AIを使えば、弁護士に依頼する前に自社で確認すべきポイントを洗い出すことができます。本記事ではその具体的な方法を解説します。
重要な前提:AIは法律の専門家ではない
最初に明確にしておきます。AIの契約書チェックは「プロによる法的判断」の代替ではありません。
AIが得意なのは:
- 一般的なリスク条項のパターンを把握・指摘する
- 不明瞭な条文の意味を平易な言葉で説明する
- 追加・修正を検討すべき条項を洗い出す
- 弁護士への相談前に「何を聞けばいいか」を整理する
金額が大きい契約・長期継続契約・初めてのパターンの契約は、最終的に弁護士や法務に確認することを前提に、AIは「準備ツール」として活用するのがベストです。
AIに契約書をチェックさせるプロンプト
基本のリスクチェックプロンプト
以下の契約書を読んで、次の観点でチェックしてください。
【チェック観点】
1. 自社(甲)にとって不利または不明瞭な条項
2. 一般的な契約書と比べて欠けている条項
3. 注意が必要な用語・表現(「直ちに」「合理的」「善管注意義務」等)
4. 契約解除・違約金・損害賠償に関する条項の内容
5. 機密保持・知的財産の帰属に関する条項
6. 総合的なリスク評価(高・中・低)と理由
【契約書本文】
(契約書のテキストを貼り付け)
特定の条項を深掘りするプロンプト
以下の条項について、リスクと対応策を教えてください。
・どのような場面でトラブルになりうるか
・有利な修正案があれば提示してください
【条項】
(気になる条項のテキストを貼り付け)
修正案を生成するプロンプト
以下の条項は自社に不利です。双方にとってより公平な修正案を2パターン提案してください。
【元の条項】
(条項を貼り付け)
【修正の方向性】
・損害賠償額を契約金額の範囲内に限定したい
・解除通知の期間を30日から60日に延ばしたい
特に確認すべき要注意条項
中小企業が見落としがちな要注意条項を紹介します。
損害賠償の無制限条項
「一切の損害を賠償する」という表現は、理論上は無制限の賠償義務を負う可能性があります。「契約金額の範囲内に限る」「故意または重過失の場合のみ」などの限定を求めるのが一般的です。
知的財産の帰属
制作物・成果物の著作権が「甲(発注者)に帰属する」となっている場合、自社が作ったものでも使用できなくなる可能性があります。受注側の場合は特に注意が必要です。
機密情報の定義が広すぎる
「業務上知り得た一切の情報」という広い定義は、後でトラブルの種になります。「本契約に関連する情報で秘密として指定されたもの」など、範囲を明確にしておく方が安全です。
自動更新条項
「〇ヶ月前に書面で通知しない限り自動更新」という条項を見落とすと、不要なサービスや費用が継続してしまいます。解約通知のタイミングをカレンダーに登録しておくことをおすすめします。
活用事例
従業員20名のWeb制作会社(東京)での事例です。新規取引先から長文の業務委託契約書を受領した際、弁護士に依頼する前にChatGPTで事前チェックを実施。
AIが指摘した主な点:
- 成果物の著作権が発注者に全帰属する条項
- 損害賠償額の上限が設定されていない
- 自動更新条項の通知期間が「2ヶ月前」と短い
これらを事前に整理した状態で弁護士に相談したことで、相談時間が短縮され費用も抑えられました。「何が問題か」を理解した上で交渉できたため、契約条件の修正も比較的スムーズに進んだとのことです。
注意:AIが苦手なこと
- 最新の判例に基づく判断(学習データの限界)
- 業界慣習を踏まえた判断(業種固有の商慣習は把握していない場合がある)
- 契約全体のバランス・当事者間の力関係を考慮した実践的な交渉戦略
まとめ
契約書のAIリスクチェックは、弁護士相談の代替ではなく「事前準備ツール」として活用するのが正しい使い方です。
- AIで要注意条項を洗い出す
- 理解できない条項の意味をAIに説明してもらう
- 重要な修正要望をまとめる
- 必要なら弁護士に的を絞って相談する
このフローを習慣化することで、契約書対応のリスクと費用を両方下げることができます。

