採用担当者が1人で何十枚もの履歴書・職務経歴書を読み、評価コメントを書き、面接に進む候補者を絞り込む——この作業は想像以上に時間と精神力を消耗します。中小企業では採用専任担当者がいないことも多く、本業と並行して行うしんどさがあります。
AIを書類選考に組み込むことで、この工数を大幅に削減できます。本記事では実際の手順とプロンプトを公開します。
AIでできること・できないこと
AIでできること
- 履歴書・職務経歴書の要点を箇条書きで抽出する
- 求人要件との適合度を評価するコメントを生成する
- 懸念点・確認すべき点を洗い出す
- 複数候補者を比較しやすいフォーマットにまとめる
- 面接時の質問リストを候補者ごとに自動生成する
AIにさせるべきでないこと
- 最終的な採否の判定(人間が責任を持つべき)
- 人格・性格の評価(根拠がなく公正性を欠く)
- 年齢・性別などを理由にした評価(差別的になりえる)
AIはあくまで「情報整理のアシスタント」。採用の判断は人間が行う、という原則は崩さないことが重要です。
準備:評価基準を言語化する
AIに良い評価をさせるには、まず「どんな人を求めているか」を具体的に言語化する必要があります。以下のテンプレートを参考に、求める人材像をまとめてください。
■ 職種:営業職
■ 必須スキル:
- 法人営業経験3年以上
- Excel基本操作(表作成・集計)
■ 歓迎スキル:
- SaaS系サービスの営業経験
- 新規開拓の実績
■ 人物像:
- 主体的に動ける
- 数字に対してコミットできる
- 素直に学べる
■ NG要素:
- 転職回数が多すぎる(3年以内に3社以上)
- 空白期間が説明なく1年以上
実際のプロンプトと使い方
書類から要点を抽出するプロンプト
以下は採用応募者の職務経歴書です。次の観点で情報を整理してください。
【整理項目】
1. 職歴サマリー(直近3社・役職・在籍期間)
2. 主な実績・スキル(箇条書き5点以内)
3. 求人要件との合致点
4. 懸念点・面接で確認すべき点
5. 総合評価コメント(100字以内)
【求人要件】
(上記で作成した評価基準を貼り付け)
【職務経歴書】
(応募者のテキストを貼り付け)
このプロンプト1つで、1枚の職務経歴書の分析が1〜2分で完了します。これを応募者ごとに繰り返すだけです。
複数候補者を比較するプロンプト
以下の3名の候補者を比較して、一次面接に進めるべき順位をつけてください。
それぞれの強み・弱みと、推薦理由も記載してください。
【候補者A】(上記で生成した要点を貼り付け)
【候補者B】
【候補者C】
面接質問リストを生成するプロンプト
以下の候補者の経歴を踏まえて、面接で確認すべき質問を10個作成してください。
懸念点の深掘りと、人物像の確認の両方を含めてください。
【候補者情報】
(AIが整理した要点を貼り付け)
運用の工夫:スプレッドシートで一元管理
Googleスプレッドシートに以下の列を作成して、AIの出力を貼り付けていくと管理が楽になります。
- 氏名 / 応募日
- AIによる要点サマリー
- 求人要件合致度(高・中・低)
- 懸念点
- 面接推奨(○/△/×)
- 担当者コメント
複数人で採用に関わる場合でも、このシートを共有すれば認識合わせが簡単になります。
導入した企業の声
従業員30名のIT企業(東京)での事例です。年間30〜50名の採用活動を行っており、書類選考だけで月20〜30時間かかっていました。ChatGPTを活用した結果:
- 1枚あたりの処理時間:10分→3分に短縮
- 選考漏れのリスク:重要ポイントの抜け漏れが減少
- 面接質の向上:候補者ごとの質問が的確になった
「採用担当者の精神的な負荷が減った」という声も挙がっており、採用の質と量を両立できるようになったとのことです。
注意事項:個人情報の取り扱い
履歴書・職務経歴書には氏名・住所・学歴などの個人情報が含まれます。ChatGPTの無料・Plusプランは入力データが学習に使われる可能性があります。
安全に利用するための対策:
- 氏名・住所などを「○○様」「A市在住」などに置き換えてから入力する
- ChatGPT Teamプランを使用する(学習対象外)
- Claude ProやGemini Advancedなど、プライバシーポリシーを確認した上で選ぶ
まとめ
採用スクリーニングへのAI活用は、採用担当者の工数を削減しながら選考品質を上げる可能性を持っています。
まずは次の採用で、履歴書1枚だけAIで要点整理してみてください。慣れてきたら比較表作成・面接質問生成と範囲を広げていくと、無理なく定着します。

